トーキョーハーバー

コンサルティングの現場から

内向的性格のサバイバル術

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内向きの記事。

 

以前に一緒のプロジェクトで働いた入社後7-8ヶ月ほどの新卒(仮にAさんと呼ぶ)からそのプロジェクト中のフィードバックを求められる機会があった。私自身、これまで多くの新卒と一緒に働いてきたがAさんはその中でも仕事ができる方と言って間違いない。また一緒に働きたいかと聞かれたらイエスと答えるし、Aさんのアサインメントを検討していた別のマネージャーに対してもその様に伝えた。全般的に理解力が高く、真面目でチームメンバーとしても働きやすく、一度指摘されたことは次回以降は確実に反映する吸収力があり、また数字に関してはかなり強いと言って良かった。その時期の新卒としては順調であるといえる。

 

Aさん自身もそのことは理解しており健全な自信を持っているようだった。一方でぼんやりとした不安もAさんは持っていたようである。今は順調ではあるが、何となく今のペースで成長したとしてもそのうち行き詰まりそうな感覚を持っており、それは私もそれを感じていたのである(この感覚を持っていること自体、自分を客観視てできていると言える)。この感覚の根底にはAさんは確かに優秀ではあるが、どちらかというとこれまでは言われたことを上手く確実にこなしていたため(そして入社してから半年はそれで全く問題ない)、今後自立的に動く自身の姿が想像できなかったことが挙げられる。特にAさんはどちらかというと内向的な性格であるため、議論を積極的にリードしたり、仕事を自分から作りに行くことが自然な動作ではなかったためである。

 

これは新卒がこの時期に直面する一つの典型であると思っている。私自身も相当に内向的であるために議論でリードすることはもちろんのこと、質問されていない状況で発言することはとても苦手であった。一方で確かに新卒半年を過ぎたら言われたことを確実にこなすだけでは不十分であり、積極的に仕事を進めることが求められる時期に差し掛かる。以前に働いた新卒でもトップクラスの人であれば、地方出張を自ら設定して営業所長との議論用の資料を準備して一人で会いに行きやることを合意する、といったことをできる人もいた。戦略系のプロジェクトであれば、それなりに複雑な分析を回すのは当然として、その結果を基にさらに掘り下げて検証するべき論点とそのための分析を設計しそのためのデータの取得を始める、といったことができるのである。これらはあくまでもトップクラスの人たちではあるが、問題はAさんにとってはそのようなプロフェッショナルとして求められる振る舞いと本来的な性格とに乖離があることであった。積極的に動けるかどうかは性格にもやはりよるところはある。一つ一つの分析やスライド作り、さらには論点に対する理解はAさんほど得意でなかったとしても、性格的に外向的な人は物怖じせずに、また間違いを恐れずに積極的に発言し結果的に伸びる人もいる。

 

教科書的に言えば、解の方向性は「プロジェクトの論点を理解し、それを分解し自分がどこを担当しているかを正しく理解し、自分が担当した仕事の次に出てくる論点を自ら考え、それに対する検証方法を考え実行し、適宜チームメンバーにそれを共有するべきである」ということになる。これはこれで何も間違っていないが、Aさんはそれは理解しているがどうにもそのように動ける気がしていなかったのである。

 

このような場合、いくつかの行動に落とせる解法はあると思っている。もちろん大原則としては上述のことを頭に入れておくことは必須である。ただ現実的にはまず作業設計に関してはある程度仕事をこなせばパターン認識でできるようになり、また内向的であることとは無関係にできるので、このように考える習慣は身につけるべきである。プロジェクトの論点というと壮大に聞こえるが、より自分の行動を基点に考えると身近なものとなり想像がつきやすい。どちらかというとボトムアップに作業ベースで直感的に必要そうなものを考えて、その裏にある検証するべき論点を考えてそれが果たして妥当なものかを逆算的に考えてみるといいだろう。特に経験がない中でトップダウンでプロジェクトの論点を分解して作業に落とし込むと、往々にして紋切り型の一般論的なものしか出来上がらない点は留意しておくといいだろう。ただ何であれ作業を考えてそこから逆算的に論点を考えてみるというアプローチはある。このように作業設計ベースで考えればそれがそのまま自分の行動となるため自分が仕事をリードすることになるのである。

 

コミュニケーションの面では「待ち伏せ作戦」が有効であると思っている。内向的な人は議論で瞬時に発言することは苦手な人が多いため、なかなか議論の波に乗れないのである。そうであれば予め「この会議ではこのような議論が生じるはずだから必ずこの発言はしよう」と考えて準備しておくことである。その時もただの指摘とか考えだけでなく、その発言のチームそしてクライアント企業に対する意味とそこから生じる論点、そしてその解法なども事前に考えておき発言するのである。これは社内会議であっても社外会議であっても同様である。これは私もかなり意識してやったことである。また多少強引であっても議論からそこに繋げてもいいだろう(もちろん自分の考えがコンテンツとしてそれなりに良いものである必要はある)。このようにすれば事前に考えをまとめておけるので内向的な人であってもできる。

 

あとはとにかくポジションを取ることを意識するべきだろう。どんなに細かいことでも「自分はこうするべきである」という行動に関する自分の意見を持っておくことである。もちろんそれができるようになるには、論点、選択肢、評価、意見といった形で思考をまとめておく必要がある。これは仕事の基本中の基本ではあるが、特に賢いが消極的なタイプの人は最初に述べた作業設計を考えた上で、自分でポジションを取ることを意識すると自立的に動けるようになると思っている。もちろんポジションを取ると、説明責任が生じるために合理的に考えなければならないため、思考を深められる。

 

外向的・内向的な性格のどちらが仕事に向いている、などは本質的にはないと思っている。しかし内向的な人が直面しがちな課題というものは確かに存在すると考えている。そのような人は、作業設計を意識し、「待ち伏せ作戦」を取り、またポジションを取ることで行動に関する意見を持つ練習をするといいと思っている。