トーキョーハーバー

コンサルティングの現場から

乱暴者

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少し前に少し変則的なチームでプロジェクトをすることがあった。100%アサインされているメンバーは皆とても優秀であるが経験が浅かったため、私自身は普段よりも(といっても普段もかなりデリバリーの内容は細かく見る)細かくチームに対するガイダンスを出していた。具体的には相当細かい作業レベルまで落とし込んだガイダンスを出していたのである。

 

ある報告会の数日前に別件でしばらくチームと時間を過ごしていなかったその間にチームメンバーの一人(仮にAさんとする)がもともと想定していなかった分析を実行し、その結果に関する議論を始めたのである。最初にその分析をAさんがし始めたときは正直なところ「報告会まで時間もないのでまずはチームで合意したことを終わらせようよ」と思ったしそれは私の態度に出たし、またそもそもAさんもそのような反応をすることは予想していた節があった。

 

ところがよくよく話を聞いてみるとこのAさんが中心となって行った分析は粗かったもののチームとして見落としていた重要な論点を浮かび上がらせていたことが明らかになったのである。そして報告会まで時間がないギリギリのタイミングでこの論点が浮かび上がったのはとても幸運なことであり、いうまでもなくそれはAさんの貢献によるものであった。

 

Aさんがこのようなことが出来た背景には、(彼がとても優秀であることは大前提としてあるが)過去にAさんと私は働いたこともあり互いに信頼関係ができたことがあると思っている。自分自身で考えてある種のリスクを取ってチームで合意したことと違うことをやっても説明責任さえ果たせれば問題ないと思っていた節があるのである。実際に以前にもAさんが例によって独断である分析をしたが壮大な空振りで終わったが特に私がネガティブな反応を示さなかったこともある。

 

ただこの件は私自身にとって一つの問題意識を気付かせてくれたと思っている。私は特に初めて働くメンバーに対しては「私が出したガイダンスは無視してもいい。そうではなくその背景にある意図を理解し状況に応じては(説明責任は生じるが)無視しても構わない」と言うようにしている。これによって本件のようなことが起きやすいように自分なりにしていたつもりであった。しかしこの件があってから、上記のように言うだけでは不十分である気がしてきたのである。

 

結局のところ、このような言い方だけではAさん並みに優秀でかつ信頼関係ができている人しかこのような動き方をしないのである。そしてそのような人はなかなかいないのである。チームに対しては「リスクを取ってガイダンスを無視していい」と言うのではなく、「積極的に上記のようなリスクを取るべきである」とまで言うべきなのである。もちろん過去のAさんのように空振りもこれによって起きやすくなるが逆にホームランも出やすくなり、おそらく期待値的にはプラスになるはずであると考えられる。また作業設計的にも一定の空振りとホームランが出ることを前提にしておくべきなのである。

 

私自身はチームに対するガイダンスはかなり細かいところを含めてかなり筋がいいと思っているし、そのように言われる。しかしなまじガイダンスが正しい分、チームとしては知らず知らずのうちに「アイツのガイダンスをこなしていれば問題ない」と思われてしまうリスクがある。これでは私の能力以上の成果は出ないのである。しかしチームで働く以上はそれでは不十分であり、私の能力を超えたものも出さなければならないのであり、そのためにはAさんのような「乱暴者」が強引に新しいことを環境を作り上げなければならないのである。それでこそチームとしての成果を最大化できるのである。

 

ジュニアなメンバーは(シニアメンバーとの信頼関係にもよるが)リスクを取ってときには「乱暴者」として強引に動くこともするべきなのである。そしてシニアなメンバーはそのような「乱暴者」が出てきやすい環境を積極的に作るべきなのである。

 

そんなことを本件から学んだのである。