トーキョーハーバー

コンサルティングの現場から

エンゲージメントファンド雑感

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特に結論のない雑記である。

 

近年は伊藤レポート、スチュワードシップコード、コーポレートガバナンスコードの導入により株主による投資先へのエンゲージメントというコンセプトが話題になる。私自身は当事者ではないものの経営コンサルティングに関わる身としては、株主という立場から経営に関与するエンゲージメント活動というものには個人的な関心があり本職の方々とはちょくちょく様々な形で議論をしている。

 

ただ話を総合すると、この株主による経営者との対話というものはコンセプトこそは非常に美しいものの現実的には必ずしも簡単なものではなく、形式的になってしまっている付加価値の高くない「対話」も多い印象である。特に数十から数百社に投資しているような機関投資家であれば一つの企業の経営を専業で行なっている経営者に対して対話を通じて何か価値のあることを提供するのは自然に考えて極めて難しいことだろう。そのため「対話」を謳っている機関投資家でも現実には実務者クラスでチェックリストを埋めているような例もあると聞く。

 

一方で友好的なエンゲージメントを活動の中心に捉え、経営者との対話に真剣に取り組んでいる機関投資家も(私の知る限り)少数ながらは存在していると理解している。彼らの話を総合するとエンゲージメント活動は現実的には以下の形態があると見られる。

 

一つ目は一時的に取引を停止しインサイダー情報を得て経営企画的に活動し、成果が全て開示されて一定期間が経過してから再び売買をするパターンである。これは相当本腰を入れてエンゲージメント活動に取り組んでいる投資家であっても極めて少数の事例しかない模様である。

 

二つ目は海外市場や新規事業などの外部情報を収集しそれを基に経営と対話をしたり、外部投資家から見た経営課題などを議論するような場合である。これはあくまでも外部情報から議論を構築するのである。また場合によってはそれらの論点や解を中期経営計画に取り入れて貰うことを提案することもあるようである。これも決して数は多くはないが行なっている投資家はいる。

 

三つ目はIRの改善を支援する場合である。これは必ずしもプレゼンテーションだけでなく、その背景にある企業活動と企業価値の結びつきを投資先に対して啓蒙するような場合も含まれる。これはいくつかの機関投資家は「定石」を持っており、それなりの実績があるようである。

 

四つ目は資本政策(配当、自社株買い)などの最適化を提案する場合でありこれは多く行われているようである。

 

上記に加えて副次的ではあるがエンゲージメント活動を通じて企業に対する理解が深まり正しい投資判断ができる、という効果も存在している。

 

では実際に上記エンゲージメント活動、特に資本政策やIRなど意外の要素はどれだけ株価に影響を与えているかという疑問が上がる。これはなかなか証明が難しいがエンゲージメントフォアンドの人々の回答は「企業価値向上に直結する考えであれば、十分に練り込めば(会社にもよるが)経営に対して気づきを与えることができる。そしてそれができれば経営者が投資家やアナリストと話したり、あるいは従業員や取引に対して話すときにそれらのコンセプトは議論や指示から滲む出て、結果的に株価に案外短い期間で反映される。大事なのはとにかく企業価値向上に立脚した骨太の提言ができるか否かである」とのことであった。これはやや宗教論争に近い側面もあるが、このような確固たる思想が根底にあって活動を行なっている機関投資家は尊敬ができるし、また長期的には資本市場全体に対して貢献しているのではないかと個人的には思えるのである。

 

現実的な問題としてエンゲージメント活動は言われているほど簡単ではない。しかしこれらに真剣に取り組んでいる人たちが持っている企業価値向上に貢献するという根源的な思想はとても価値があると思えるのである。本職の人たちからの話を聞いてそのような感想を持ったのである。