トーキョーハーバー

コンサルティングの現場から

構造と彩り

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基本的にプロジェクトのデリバリーにおいては最初の報告会では意識的にオーバーデリバー(期待値以上の成果を出すことを)するべきだと考えている。決して「終わりよければ全てよし」ではなく過程も大事なのである。結局クライアントからすると相応に高い報酬を払ってーまたそのための稟議を社内で通してープロジェクトを立ち上げているためどうしても最初はコンサルタントに対して不安を抱く。そのためまずはクライアントに安心して貰う必要があるのであり、そのためには多少負担が掛かっても意識的にオーバーデリバーする必要があるのである。特に初めて一緒に仕事をするクライアント企業であればそれは尚更である。

 

このようにオーバーデリバーする際に特に戦略系のプロジェクトであればいくつかのコツがあると思っている。具体的にはまずは数字を用いて全体的な数字を定量的に構造化し、その上で定量・定性情報を入れ込んで「彩り」を与える、といった具合である。(これはプロジェクトデリバリーの基本といえば基本である。)

 

やはり分かりやすく説得力がある形で概念をまとめるには数字を用いた構造化することが望ましい。最初に数字を用いて概念を構造化することで議論の現在位置が明確になるのである。例えばある企業の競争力を分析するにしても過去の営業利益をツリーのような形で分解し、それぞれの要素を個別に競争力の評価という文脈に従って分析していくのである。そしてもちろん個別の要素を分析するにしても同様に数字を用いて構造化していくのである。

 

このとき意識するべきは上記の一連の構造化は論理的な作業であり一定の慣れがあれば簡単でありまた格別大きな示唆が出ることはまずないということである。クライアントの視点でも「綺麗にまとまっているがあまりインサイトは感じられない」という印象を得ることが多い。結局のところ数字を用いた構造化は「無味乾燥」としておりそれ自体が大きなインサイトにつながることはないのである。ただしだからといってこれを軽視してはならない。このような堅牢な定量的な構造があるからこそ聞き手は議論の現在位置が確認でき、頭に情報が格納できるのである。そのためインサイトがないからといってこの手順を飛ばしてはならないのである。(あるいはいい加減な「緩い」構造に逃げてはならないのである。あくまでも理想は定量化された構造である。)

 

上記の構造で議論の土台を作った後は議論に「彩り」を与えることに注力するべきである。これは個別の要素に関して定量・定性分析を加えるなり、最悪、無味乾燥とした定量的な構造に吹き出しで情報を加えるなりをして考察をするのである。多くの示唆はこの段階で初めて導出される。しかし先ほど述べたとおりいくらここに価値があるからといっても最初の堅牢な構造化なしにいきなり個別要素の示唆を提示すると「面白いけれど断片的でこの示唆がどれだけ大事か分からない」という印象を聞き手に与えてしまうのである。

 

「彩り」の与え方は論点に沿って考える、というのが基本原則ではあるが外形的なコツとしては極力、視覚的に違う「顔」のスライドであることを意識するべきである。それは概念図であったりグラフであったり何かの写真であったりプロセス図であったりとするが意識するべきは同じようなスライドが繰り返しならばないことである。「彩り」は個別要素ごとに論点は異なるはずなのでほぼ間違いなくスライドの「顔」もまた異なるはずであり、もしも同じようなスライドが並んでいたら何かがおかしいのである。一方で構造化に関してはむしろ同じような「顔」が並ぶことになる。理由は一つの構造に従って事象を分解しているためである。

 

いずれにせよ構造化と個別要素の示唆出しの両輪を回していく必要があるのである。これは文字で起こすと当たり前に見えるかもしれない。しかし多くの場合、人はどちらか一方が得意なことが多いため、もう一方がおろそかになりがちである。そのため意識的に両者のバランスが取れているのかを適宜確認する必要がある。無味乾燥としてないか?彩りは十分か?構造化は堅牢か?といったことを自問し、どちらが欠けているのかということを批判的な目で見る必要がある。これらを短期間で人回しをして最初の報告会に臨むとクライアントの期待を超えることができ、信頼を勝ち取ることができるのである。