トーキョーハーバー

コンサルティングの現場から

経営コンサルティング業界の戦略

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年初に「経営コンサルティング業界の未来」というエントリを書いた。
https://www.tokyo-harbor.com/entry/2019/01/02/000440

 

詳細は当該エントリを参照してもらいたいが、基本的なメッセージとしては伝統的なコンサルティング以外のサービスラインおよびデリバリーモデルが出てくるだろう、というものである。本エントリではそれに関連して、日本における経営コンサルティング業界の今後起こることが予想される仮説を戦略的な観点から述べていきたい。

 

私は経営コンサルティング業界のプロジェクトデリバリーの大半は業界/機能エキスパートが出す知見とそれらをクライアント企業の文脈に沿って統合するインテグレーターの二種類の異なる役割を持ったパートナーたちにより実行されるようになると考えている。経営コンサルティングというものが生まれてから100年程度が、日本では50年程度経っているが、業界の成熟とともにクライアント企業から依頼されるテーマの難易度は自然と上がるだろう。簡単なテーマであればわざわざコンサルティングファームに高い報酬を払って依頼する必要はない。特に昨今は元コンサルタントが相応の数いるためにそのような人材を採用して社内コンサルタントを用いて推進することもしやすくなってきている。

 

このようにコンサルティングファームに期待される課題の難易度が上がるとコンサルティングファームはそれに応じてより高度な業界・機能知見を有して提供する必要がある。ただしコンサルタントは常に一般界ではなく個別解の提供が必要であるために上記で述べた通り高度な知見を持ったエキスパートに加えてそれらを統合するインテグレーターの役割を果たすパートナーも必要になるのである。それら二種類の役割を持ったパートナーたちがチームを組んでコンサルティングサービスを提供するのである。

 

このようなモデルにおいてはパートナーが原則として状況によってそのどちらの役割も果たせる必要がある。そのためパートナーは常に専門性を磨きながらそれを提供しつつ、自分のクライアントに対しては他の専門性を持ったエキスパートの知見を統合しなければならないのである。

 

このようなデリバリーモデルは経営コンサルティング業界が最も発達しているアメリカでまずは起こり、その後は西欧でも同じようなモデルに転換していったようであり、いずれは日本でも同じ現象が起きると確信している。もちろん社長に対してシニアパートナーがカウンセリングをするという伝統的なデリバリーモデルも残るだろうが比率で見ると下がっていくだろう。

 

もし上記の仮説を真とするならば業界にはどのような意味合いがあるだろうか?私はこれの最大の意味合いは経営コンサルティング業界は規模が効くゲームに移行してきたということだと解釈している。ファームとしての規模が大きいほどファームとしての専門性が高まるのである。昔はパートナーたちが各々、自分たちのクライアントに対してサーブしており、実態としては「個人事業主の集合体」であり規模がほぼ効かないモデルとは大きく異なるのである。ただしいくら規模が大きくても1カ国で全ての知見を持てることにはならないと考えられるため、付随的にはグローバルにワンファームとして動けることがより求められるだろう。

 

これを踏まえると私自身は経営コンサルティングファームが生き残る戦略は論理的には四つになると考えている。

 

一つ目は規模を追う戦略である。規模を大きくしファームとしてはあらゆる業界・機能に対する知見を有し、それらを有機的に統合できるオペレーティングモデルを構築するのである。しかしこの規模型は現実的には既に数社のグローバルファームしか追えないだろう。特に日系のコンサルティングファームには難しい戦略である。

 

二つ目は特化戦略である。全ての業界・機能に知見を有することは難しいため戦略としては論理的には絞る、ということが考えられる。これは地域×機能で考えられる。例えば日本における消費財マーケティングかもしれないし、日本企業のPMIかもしれない。あるいは日本企業の調達費削減に特化してもいいかもしれない。これなら規模を負わなくても戦えるのである。

 

三つ目は独自サービスラインの提供である。これは特化戦略の派生系とも言えるが、これまでに存在しなかったサービス、例えばデザインや情報技術と経営コンサルティングを融合させたようなサービスラインを開発しそれを提供するのである。これも一つの特化ではあるが、既存サービスに特化した二つ目の戦略と異なり新しいサービスの開発が求められるのである。(そのためリスクも大きくなる。)

 

四つ目はコスト戦略である。文字通り徹底的にバックオフィスなどのコストを削りコストを武器に生き残るのである。ただし経営コンサルティングにおいて最も大きなコストは人件費であり、それを下げると論理的にはデリバリーの質は下がるという難しさはある。もちろん他のコストは下げるにせよ、どうしても「低品質・低単価」になってしまう。もちろんデリバリーモデルを標準化することにより品質は落とさないという方法もあるがそれは特化戦略とコスト戦略のハイブリッドとも言えるだろう。

 

以上がエキスパート+インテグレーター型が主流になるという前提を受け入れた場合の論理的な戦略である。この業界に入ろうとしている人も業界の関係者も上記を念頭においておいても悪くはないだろう。