トーキョーハーバー

コンサルティングの現場から

ケイパビリティ

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昨日のエントリを少し上位化して述べる。

 

企業のケイパビリティという概念がある。これに関する定義は経営学における戦略などと同様に案外決まったものはないように見えるが(「ケイパビリティとは組織の能力である」というトートロジカルな定義もよく見かける)、本エントリでは仮に「何らかのビジネスプロセスを効果的かつ効率的に実行するために企業が有する明示的または非明示的な手順」と定義する。その中でも競争力の厳選となるケイパビリティをコア・ケイパビリティとここでは仮に呼ぶことにする。

 

この企業のコア・ケイパビリティというものは外部からはもちろん内部からも分かりにくいものの企業の競争力に大きな影響を及ぼす要素だと考えている。例えば同じような消費財を小売店に卸している企業であっても、「ゴリゴリの営業会社」もいれば「ネットっぽい会社」もいるのである。同じ事業立地で戦うにして勝ち方は複数あるという前提を受け入れれば、何をコア・ケイパビリティの選択は各企業の判断でありーあるいは歴史的に由来するものでありー、それ自体は同じだけの価値創造を出している限りにおいては良し悪しの問題ではなく選択の問題と言えるだろう。

 

問題はコア・ケイパビリティというものはなかなか変化しにくいものであるということである。そのため外部環境が急激に変化したときにそれに応じて自分たちが得意とするビジネスプロセスが競争の観点で重要でなくなってしまうことがあり、代わりに自分たちが苦手なプロセスが重要になってしまうことがある。

 

昨日のエントリで述べた小売業においてEC化が進むことで起きている現象もそれに近い。近年、急激に伸びている会社も事業立地こそは伝統的な小売業であっても、デジタルマーケティングやECの運用などに強みを持ちそれ以外は外注するといったこれまでの企業とは全く異なる領域にコア・ケイパビリティを置いている場合も多い。このような競合に対抗するために伝統的な企業も同様のケイパビリティを強化しようとしてはいるものの、実態としては数人の担当者・部長クラスの採用と多少の予算の積み増しでお茶を濁そうとしている企業も多いように見える。

 

しかしこのコア・ケイパビリティの強化は多くの場合、競争力が表出するのは特定のバリューチェーンであったとしてもそれを実現するためのオペレーションは他のバリューチェーン有機的に繋がっている場合が多く、単に当該バリューチェーン経営資源を投入するだけでは不十分なのである。さらにはオペレーティングモデルの背景にある組織の価値観の刷新もコア・ケイパビリティを変えようと思うと必要である。ここまで踏み込んだことをせずに多少の経営資源を投入するだけでは外見は多少、「それっぽく」はなるものの実態としてはオペレーションがちぐはぐになり、まず上手くいくことはないだろう。そしてこのコア・ケイパビリティを変えることができるのは昨日のエントリでも書いた通り社長しかできないのである。

 

組織のケイパビリティはなかなか定量化が難しいものの確実に存在するものであり、またケイパビリティを獲得するのは有機的に連関したオペレーティングモデルを変更することが必要であり、それをできるのは社長だけである。