トーキョーハーバー

コンサルティングの現場から

One Firmの意味

スポンサーリンク

昨日に続く業界ネタ。

 

コンサルティングファームに依頼される仕事の相応の割合はなんらかの形で海外との関連がある。それは海外進出かもしれないし、逆に外資系企業の日本進出かもしれない。あるいは社内のなんらかの取り組みをグローバルの拠点で推進することかもしれない。あるいはクロスボーダーの買収案件かもしれない。主要なコンサルティングファームであれば世界に事務所を構えているため、そのネットワークを活かして上記のグローバルな仕事を支援するのである。クロスボーダーの買収案件の場合はコンサルティングファームだけでなく弁護士事務所や会計事務所も同様である。

 

ところがこの時のグローバルの支援体制は実務的に考えると案外一筋縄ではいかず、様々な話を総合すると案外ファームによって異なるのである。この難しさと違いは本質的にはプロフェッショナルファームの構造に由来するものとなる。

 

もう少し説明する。日本のクライアント企業が何らかのクロスボーダーのプロジェクトを立ち上がると一般にプロフェッショナルファームの日本チームが主たるクライアントカウンターパートとなり、さらに海外の現地チームもローカルの切り口から支援を行う。このようなとき多くのプロフェッショナルファームではローカルチーム側のコミットメントが低くなるという問題が発生しがちである。結局のところローカルチーム側からすると当該クライアント企業を支援しても単発プロジェクトにしかならない可能性が高いため、どうしても現地の大口クライアント企業よりも優先順位が落ちるのである。(もちろん日本側が海外チームを支援するときも同じ構図である。)

 

そのため何らかの形でローカルチーム側のインセンティブを与える必要がある。もちろん報酬をローカルチームと日本チームで分けるということも考えられるが、それでも上記の理由から少額の報酬が単発で入るだけでありどうしても「単発アルバイト」をこなすのに近い感覚が生じがちである。そうではなく評価制度上、海外の事務所の仕事を手伝うことが日本の仕事を手がけることと同じかそれ以上に評価され、逆にそこで「やっつけ仕事」をすると評価が落ちるような仕組みが必要である。また根底にはファームは”One Firm”であり日本だろうがどこだろうが同僚を助けるべきであるという価値観の存在が求められる。

 

ただし実はグローバルなプロフェッショナルファームであってもこのような”One Firm”体制を敷いているところはかなり少ない。例えば会計系ファームなどは一見単一のグローバル企業に見えるが、あくまでも国ごとに全く別のファームが同じブランド名を使用しているだけであり同じファームとは言えない。そのため日本チームがローカルチームの仕事に不満を持ったとしてもそれを伝え是正するのも指揮系統上、海外の事務所は別会社である以上それなりに骨の折れることである。弁護士事務所も海外案件は提携先の別の弁護士事務所と協業することもあるが、これも同様の問題が生じる。また組織としては一つであっても上記とは異なる評価制度や価値観を持っているファームもあると見られる。

 

これを避けるために日本の予算で海外拠点にプロフェッショナルを派遣する、または採用するという方式もある。このようにすれば現地にいるプロフェッショナルは日本の事務所に所属するため上記のような問題は生じない。しかしこれでは見方を変えると日本から送り込まれているメンバー以外は同じファームであっても日本の仕事は手がけないとも見ることができ、これではファームの中にファームが存在しているようなものであり非効率な側面がある。

 

この辺りはプロフェッショナルファームを外部から見ていてもほとんど差がないように見えるが実態としてはかなりファームによって違いがあり、それはファームの構造、そして根底にはファームの思想や価値観に起因していると言えるだろう。

 

一般に戦略コンサルティングファームの報酬はかなり高いとされている。その報酬を正当化するためには常に難易度の高い仕事を手がける必要があり海外関連のプロジェクトはそのような仕事の一つの典型である。コンサルティング業界の裾野が広がるとその分、全体としては論理的にはコスト圧力が働くはずでありそれを跳ね返すためには海外プロジェクトなどの難易度の高い仕事で高い付加価値を出していく必要があるのである。そのためには今後は”One Firm”として動くことがより求められると思っている。