トーキョーハーバー

コンサルティングの現場から

強い経営企画部

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経営コンサルティングファームのザ・クライアントはあくまでも経営者であるが、実務的には経営企画部と協業することが多い。

 

この経営企画部というのは組織構造上、原則としてコストセンターであり(組織構造や企業文化にもよるが)一般に事業部に対する影響力が思っているほど無いことが多い。もちろん本来の指揮系統上は経企から事業部への依頼事項は社長からの指示でもあるはずなので経企を無視することはできないはずではあるが、現実問題としては事業部に対する影響力がなく事業部からすると「面倒くさい部門」と見られがちである。特に財務部や人事部と違って予算や人員などの経営資源を掌握していないため権限は小さいのである。また経企の活動も深く考えないとあっという間に「事業部の企画のホッチキス留め」になってしまいがちであり、予算などの提携業務を回すだけの低付加価値部門となってしまうのである。

 

このような特性がある中でどのようにすれば経企は価値を発揮できるのか、というのは面白い命題であると思っている。私自身、外部の立場から何社もの経営企画部と仕事をした経験からは、経企が価値を出すためには下記の取り組みが必要だと考えている。

 

●経営アジェンダを積極的に立案する
●意思決定の流れを設計・管理する
●事業部に対して腹案を持っておく

 

一つ目。経企は予算、IR、数年に一度の中経の立案などの定常的に発生する業務を行うだけでなく、市場環境、競争環境、事業環境などを分析し自社の経営課題を積極的に抽出するべきである。以前からも述べている通り、企業は経営が介入しなければ「昨日やったことを今日もやり明日もやり続ける」構造になっており、何らかの変化を起こすためには経営者が意思を持って取り組まなければならないのであり、そのための素案を経企は策定するべきなのである。これには本来は高度なインテリジェンスが必要な活動なのである。

 

二つ目。経営課題が抽出されても、それだけでは不十分であり経企は経営者の代理としてその課題を解くことにも責任を負うべきなのである。そのためには特定した経営課題を解くための段取りを設計し、それを管理しなければならない。このように書くとただのプロセス管理のように見えるかもしれないが、これは組織の力学に精通している必要がある。誰が誰にどのような立て付けや大義名分の元に指示をするのか、といったことを理想論と現実論の両面を睨みながら設計しなければならない。冒頭にも書いた通り「経企の指示は社長の指示である」としても経企から多くのことを事業部に依頼するといずれ「社長の威」は剥がれていく。またどのような根回しをすると事業部は動くのかなどの社内力学にも精通している必要がある。やはりこれを設計し、プロセスを管理するのも簡単なことではないのである。

 

三つ目。経営課題を特定してもそれに対する解を検討するのは経企ではなくあくまでも事業部門なり担当機能部門(組織課題であれば人事部など)である。しかしだからといって経企は事務局に徹して「ホッチキス留め」だけをするべきではないのである。担当部門に検討依頼をした課題に対しては(その中でも特に重要な課題に対しては)経企としても解の腹案を持つべきであり、事業部門や機能部門の解が経企の腹案と差分があったらー言い換えると経企の目からは解の質が不十分に見えたらー、何らかの形で担当部門に対してチャレンジするべきなのである。チャレンジの方法は二点目で述べた通り慎重に設計する必要がある。社長に事前に腹案からの差分を説明し社長からチャレンジする形でもいいし、あるいは全役員の前で経企部長や管掌役員が正面切って正論を述べるのでもいいかもしれない。これは状況や企業文化、組織構造などによる。

 

ただいずれにせよ経企は腹案を持つべきなのである。そしてその腹案は事業や機能を担当してないからこそ客観的なファクトに基づくものでなければならないのである。(もちろん事業や機能を担当している部門であってもファクトベースである必要はある。)特に細かいオペレーションは担当部門ほどは精通していない以上、より経営目線で論理を構築する必要がある。これもやはり極めて高度なインテリジェンスが必要なのである。

 

これらの根底にある発想は経企はあくまでも社長の代理人であるということを自覚し、あくまでも経営者目線で自社を俯瞰する必要がある。そして高度なインテリジェンスを持って経営課題を特定し、組織力学も踏まえながら検討プロセスを設計し、適切な緊張感を事業部に与えるべきなのである。このような気概を持って臨めば外形的な権限がない経企であっても付加価値が出せ、また他部門からも一目を置かれるのである。