トーキョーハーバー

コンサルティングの現場から

パートナーからシニアパートナーにかけて

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パートナーからシニアパートナーに掛けて発生する新たな概念に関して。

 

コンサルティングファームのパートナーはプロジェクトのデリバリーはもちろんのこと、プロジェクトの提案活動(言葉は好きではないが「ピッチ」)、さらにはその前段階のクライアントとの関係性構築にも責任を負い、主体的にそれら三つの活動に取り組む。

 

各パートナーはこれらの活動を業界軸や機能軸といったテーマに則って行うことが一般的ではあるが、その中核には常にクライアント軸というものがある。コンサルティングはあくまでもクライアントサービスであるためこれは当たり前に見えるが、パートナーの活動をクライアントという軸で捉えるといくつか新しい意味合いが浮かんでくる。

 

一社のクライアント企業という軸でパートナーたちの活動を捉え直すと、当該クライアント企業に対する個別の提案活動やプロジェクトデリバリーを超えてパートナーたちの活動をまとめ上げ整合させクライアントへの提供価値を最大化するという活動が新たに必要になるのである。(カタカナを用いるならばオーケストレーションというのが一番しっくりくる単語である。)

 

ここで述べるチーム運営の例をいくつか挙げる。例えばさまざまな事業部と仕事をしているとコンサルティングファーム側のチームの発想が個別最適的になり知らず知らずのうちにCEO視点が抜け、結果として事業部長にとっては重要であってもCEO視点では不要な仕事を引き受けたりあるいは提案してしまったりする。そんなことが無いように当該クライアント企業にサーブするパートナーたちが定期的に集まってCEO視点で何が最重要課題かを確認し、必要に応じて議論をCEOにぶつける必要がある。些末な例ではどのパートナーがクライアント企業のどの個人のカウンセリングパートナーとなるかは予め取り決めておかないとクライアントにとってコミュニケーションがわかるにくくなる。

 

現代のプロフェッショナルファームにおいては一人のパートナーだけで一社のクライアントにサーブしてもその提供価値は極めて限定的であり、提供価値を最大化するためにはファームのパートナーたちがチームを組んでクライアント企業にサーブするというのが定石である。社長に対するカウンセリングは一人のシニアパートナーが担当したとしても、その他のCXOや事業部長、さらには海外子会社の役員に対しては別のパートナーがカウンセリングパートナーとして(プロジェクトの有無にかかわらず)継続的に関わり、さらに当該企業が直面する課題の解決のためにはその知見を最も有するエキスパートが適宜登場する、といった姿が一つの理想形である。そのためには上記のようなオーケストレーションが必要となるのである。

 

パートナーの活動をこのようなクライアント軸で捉えると、このチームをいかに効果的に運営するのかは提供価値最大化の上では重要でありまたその活動は以前から述べている「アカウント・ピッチ・デリバリー」とやや外れた概念である。(正確には「アカウント」に当たる活動とも言えなくはないが「アカウント・ピッチ・デリバリー」という考え方はどちらかというとパートナー個人の活動という軸で捉えているのに対し、このチーム運営は集団の活動であるため以前から述べている「アカウント」の活動の範疇を超える。)

 

このようにコンサルティングファーム内のオーケストレーションをすることは提供価値を最大化するためには必須の活動であるが、これは従来の「アカウント・ピッチ・デリバリー」の範疇を超えた活動でありパートナーになって、しかもある程度シニアなパートナーになって初めて生まれる仕事である。そのため個人単位でで「アカウント・ピッチ・デリバリー」を考えていればさほど問題がなかったパートナー前期から遷移するにあたってはこのようなオーケストレーションの仕事が存在し、かつそれに十分な時間を意識的に割くことが求められる。これはそれなりに忙しいパートナーたちにとっては最初は必ずしも自然なことではなく、かなり意識的に時間を使わないとすぐに後手後手に回ってしまい、じわじわとコンサルティングの付加価値が低くなってしまうのである。

 

この辺りはパートナーになってから「見習いパートナー」としてシニアパートナーから学ぶことである。ファームの徒弟制は決してパートナーになったら終わりでは無いのである。