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コンサルティングの現場から

セラノスの投資に関する雑感

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先日、下記のnoteを見て改めてセラノスについてぼんやりと考えた。

 

note.mu

セラノスの事件で個人的に興味を持ったのはなぜ投資家たちは投資をするに至ったのか、という点である。同社は800億円程度を調達していた模様であり、その中にはオラクルの創業者のラリー・エリソン氏やメディア王のルパート・マードック氏など著名人の他にも何人ものVC投資家からも資金を集めていたようである。

 

単純な疑問として彼らのような頭脳明晰な人たちがなぜ騙されたのかのだろうか?私自身この点に興味を抱いてセラノスのCEOのホームズ氏の講演の動画も少しだけ見たが、(あくまでも後付けでバイアスがかかっている点は大いに認めるが)良く言われている通り確かに抽象的な話に終始している点は気になるところである。

 

www.youtube.com

 

もちろん「本物の」起業家も結構抽象的な話をする。産業を変えるような事業を興す人たちの多くは具体的な事象を独自の切り口で抽象化して捉える傾向にはある。ただし肝心のセラノスのような血液検査事業において競争力の源泉となる技術の話においても抽象論で終わっていたのである。これは講演会であればそれでも構わないかもしれない。しかし数十億円の出資をする人であれば必ずその点は気になるはずであり、その時に競争力の源泉が具体的に見えなければ、合理的に考えればとても投資しないと考えられる。

 

もしも私が知っている何人かの大手PEの幹部がデューデリジェンスにおいて技術力に関する質問をし上記の動画のような回答が返ってきたとしたらたちまち顔が曇るだろう。(とてもよく想像できる。)もちろんPEとベンチャー投資では投資に対する見方は異なる面もあるが、ベンチャー投資においてもそれなりの額を出資するのであれば当然技術の競争優位性に関しても具体的に把握しにかかったはずである。それにも関わらずVC投資家が結果的に騙されて投資をしたのはなぜなのだろうか?

 

単純に彼らが馬鹿であった、あるいはホームズ氏がプレゼンテーションの達人であったとして済ませるのはたやすい。しかし私は少し違う見方ができる思っている。投資は純粋な理屈以外の要素に左右される、そして頭脳明晰な人であってもそれに抗うのはかなり大変だということである。ここからはあくまでも想像でしかないが、取締役会に著名な人たちがいること、投資できることそのものが「ステータス」と見られていること、他の大物投資家が既に投資をしていたこと、などが考えられる。このような要素があると、ある種のバイアスが掛かり投資判断がゆがむのではないだろうか。(私は全く詳しくないが行動経済学ではこのようなテーマを取り上げているのだろう。)

 

投資は本来ならば経済合理性を追求する活動であるはずであるが、何十億円の投資判断を出来る立場にある人であってもバイアスが掛かり判断を誤ってしまうのだろう。ましてや自分のような平凡な人間であればさらにそのようなバイアスにははまってしまうはずである。投資に限らずあらゆる判断においてバイアスの存在を常に忘れてはならない、そんな教訓がセラノスの事件からは得られるのではないかと思った三連休であった。