トーキョーハーバー

コンサルティングの現場から

商社のビジネスDD

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過去2回ほどPEと事業会社のビジネスの違いについて述べた。私自身、PEと事業会社の中間的な位置付けに商社のDDがあると思っている。

 

よく言われている通り日本の大手商社は世界的に見ても非常に独特な事業である。商社は元々は伝統的なトレーディングを中心に手掛けていたが、その後はトレーディングだけでなく投資も行い投資会社的な色合いも帯びてきている。このような商社が企業買収に際してビジネスDDを行うときはPEとも商社以外の事業会社とも違う視点が必要であると思っている。なおここで述べている投資は主に企業買収を想定しており資源系への投資は想定していない。このあたりは私自身があまり馴染みがないため特に述べられることもないが投資時には企業買収とは大分異なった視点を持っているのではないかと推察される。

 

商社のビジネスDDの場合は原則としては将来的なエグジットを想定していないため、3-5年でのエグジットを一般的には想定するPEファンドよりは事業会社に近い視点を持つ。そのためビジネスDDにおいてもスタンドアローンでの評価は利益成長というよりは事業の現在の競争力の評価に力点を置く。一方でシナジーに関しては事業会社のように類似事業を行なっていることは稀であるためシナジーも原料の調達や海外販路拡大といったトレーディングに関連する領域が中心になるためやや狭くなる。

 

ここまでは多少の違いこそあれ基本的には事業会社のビジネスDDと似ておりその違いは程度問題であり質的な差はない。一方で私が商社独特と感じるのは投資ストーリーの構築である。日本の5大商社はいずれもコングロマリットの業態であるため何らかの投資を実施するときは他の事業に回っていたかもしれない投資資金を「取ってくる」必要がある。

 

そのため社内の稟議では「他の本部ではなくなぜ当該本部なのか?」「その中でも他の事業部ではなくなぜ当該事業部なのか?」「その中でもなぜ当該領域なのか?」ということの説明をする必要がある。これは事業会社やPEではほぼない商社の業態特有の理屈である。

 

そしてこれらの投資ストーリー ー 投資意義といってもいい ー を語る上では可能な限り大局的な視点とつなげる必要がある。外部的には日本という国のあり方、マクロ的なトレンド、内部的には当社の中長期的なビジョン、それを実現するための戦略、過去の活動といった文脈に合わせて当該投資の位置付けを語る必要がある。そのため1-5年の短中期的な定量的なシナジーといった細かい話というよりは10年20年といった長期的な戦略的意図と合致していることを示す必要である。この辺りはある種独特であるため慣れが必要である。