トーキョーハーバー

コンサルティングの現場から

続・事業会社とPEのビジネスデューデリジェンスの違い

スポンサーリンク

しばらく前にプライベートエクイティ (PE)ファンドと事業会社のビジネスDDの違いについて述べた。一言でいうならば前者は利益成長の理屈を重視し後者は事業競争力を重視するということである。関連してコンサルティングファームがこれらの企業をクライアントとしてビジネスDDを支援するときにどのような付加価値の出し方をするのかに関して少し述べてみる。

 

事業会社をクライアントとしてビジネスDDを実施する場合は感覚的には付加価値の半分はストラクチャリング、もう半分は業界(一部は機能)知見であると考えている。ストラクチャリングというのは簡単に言えばビジネスDDの中での発見を買収判断、あるいは企業価値算定につなげるために情報を構造化することである。当たり前ではあるがビジネスDDではさまざまな情報が出てくる。しかしそれをビジネスDDという文脈で捉え取捨選択をし優先順位をつけ、そこから示唆を出すとともに数字に落とし込むといった一連の動作には一定の慣れが必要でこれはコンサルティングファームの方が事業会社よりも得意であることが多い。事業会社は(当たり前ではあるが)オペレーションを担っているためどうしても買収の検討には必要以上に細かいオペレーショナルなこともビジネスDDにおいてみたくなることが多い。そのためコンサルティングファームとしては上記で述べた通りビジネスDDの文脈で情報を整理することには一定の価値があるのである。

 

上記は付加価値の概ね50%程度であり残りは業界知見で付加価値を出せる。多くの場合事業会社がわざわざお金を払って外部にビジネスDDを委託するのは対象会社が位置する業界や地域に不慣れであるためであることが多い。典型的なのは海外企業を買収するような場合であり、事業そのものは本業として手がけているために精通していても対象地域のことはわからないために外部に委託する、といったような場合である。

 

逆に例えば工場の競争力の評価といったオペレーションに関するものは現実的にはコンサルティングファームよりも事業会社の方がはるかに精通しているため不用意にそこに時間を使うべきではない。(現実的には、と書いたのはおそらく大手コンサルティングファームであれば「ウチはどんな業界・テーマで付加価値が出せる、そしてもちろんDDにおけるオペレーションの評価においても、である」と主張することが予想されるためである。)むしろここは上手く役割分担をしてクライアントである事業会社が行うオペレーションの見立てを上手くビジネスDDの文脈に変換することに専念をした方がいいだろう。

 

一方でPEに対するビジネスDDの場合は付加価値の出し方が異なってくる。特に最初のストラクチャリングに関してはほぼ付加価値にならない。より正確には「出来て当たり前」と見做されるのである。PEの場合はコンサルティングファーム出身者もジュニアからシニアまで多く物事の考え方などはコンサルタントと似ている部分も多いため当然上記で述べたようなストラクチャリングはPEのメンバーもするのである。そのためPEから見るとそのようなことは出来て当たり前、出来ていなかったら論外なのである。

 

PEに対するビジネスDDにおけるコンサルティングファームが出す付加価値の大半は業界・機能知見である。PEは直接的には事業を営まないため(もちろんPEという事業は行なっている)、買収対象の事業に関する知見は持ち合わせていないためにそれらをコンサルティングファームのような外部に頼るのである。そしてそれは業界知見だけでなく(事業会社がクライアントである場合はあまり大きな付加価値の源泉ではなかった)営業、製造、物流、研究開発といった各種機能の競争力の評価も含まれる。

 

これらのような特徴があるためコンサルティングファームとしても体制をクライアント企業の性質によって変えなければならないのである。