トーキョーハーバー

コンサルティングの現場から

餃子の王将は餃子屋なのか?

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昨日に続いて餃子ビジネスに関して。(私は本業では外食は見ないが、プライベートではピザビジネスはもちろんのこと餃子ビジネスも好きなのである。)

 

餃子の王将は餃子屋なのかという問いがある。「何を言っているのか、餃子屋に決まっているだろう」と思うかしれない。しかし私はそうは思っていない。もちろん餃子屋か否かはその定義にもよるが本質的には餃子の王将は「街の定食屋さん」だと思っている。もちろんブランドイメージとしては餃子が前面に出ているだけであり、実際に多くのお客は餃子は食べるが利用のされ方としては定食屋に近い位置付けになっている。実際に価格帯を見てもセットメニューで800円前後であり、これは「街の定食屋さん」や大戸屋などと似た価格帯になっている。昨日のエントリでも述べたが一見同じ「餃子チェーン」を謳うダンダダン酒場は居酒屋であるため全く餃子の王将とは性質が違うのである。(ある記事でダンダダン酒場が餃子の王将を駆逐するのか、といったことを述べているものがあったが個人的にはそれらを同じビジネスとして比較することはナンセンスであると思っている。)

 

まず「街の定食屋さん」にはなくて餃子の王将にはある強みにテイクアウトができることである。これは外食として、特に低単価・高回転率で昼どき・夕食どきのピークタイムでいかに稼ぐかが重要な外食ビジネスでは重要である。テイクアウトは本質的には空間拡張であり家賃比率がそれなりに高い中で、ピークタイムに空間的な拡張ができると強い。牛丼にしろカレー屋にしろコーヒーショップにしろ儲かっている外食の多くはテイクアウトができるのである。(汁物のラーメンはテイクアウトができない点はビジネスとしては痛い。)

 

次に(これも昨日述べたダンダダン酒場と似ているが)餃子の王将は業態の特性上の強みがある。具体的にはダンダダン酒場同様に利用シーンが広いことである。定食屋だと昼夜だけだが、餃子の王将の場合は夕方の小腹が空いた際におやつ代わりにも入れるし、飲み会でも、飲み会後の〆のラーメンのような形でも利用できる。わずか260円で餃子を食べられるためかなり気軽に入りやすくまた餃子はつまみにもおやつにも食事にもなる特性がある点は強いだろう。

 

もう一つの仮説的な強みはおそらく定食屋よりもドリンクの注文率が高いと推測されることである。実際に入店してみると時間帯にもよるが感覚的にはドリンクの注文率が高いように見える。単純に餃子とアルコールは相性がいいように思われ、また周囲に飲み利用をしている人がいるとドリンクを頼みたくなるように思える。値付けとしても同ブランドの平均客単価は950円程度でドリンクがサワーで260円なので750円程度のセットに一品サワーを頼んで1000円で収める、といった人も多いのではないかと考えられる。

 

このような特徴があるため餃子の王将は「街の定食屋さんプラスアルファ」のような位置づけになっていると考えらる。この業態は「ケの消費」であるため日常生活のルーチンに食い込むことが重要であるが餃子の王将は実際にそれができていると考えられる。実際に過去12年の既存店昨対売上高を見るとそれが透けて見える。

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まず推移を見ると08年のリーマンショックのときに急激に伸びたことが目に付く。この期間、ある人気芸能人のTV番組で取り上げられて行列ができた効果もある模様だが、やはり2008-09年のあの空気を考えるとより高単価な外食から平均客単価950円の餃子の王将に移ってきたと考えられる。要因は仮説にすぎないがいずれにせよ売上高がハネたことは事実であるが、注目すべきはその翌年にもその反動で売上高が落ちなかったことである。もちろん流石に既存店昨対売上高が120だったときの翌年は100を下回ったが、売上高がハネ、その翌年にその分が全て剥がれたたわけではないのである。これは恐らく「世の中不況だからいつもの店ではなく少し安い餃子の王将にいくか」と思い実際に来店してみると「思ったよりもおいしいじゃん。定番にしよう」と思った顧客がいたのではないかと考えられる。つまり日常ルーチンに食い込んだのである。

 

そしてもう一つ注目するべき点が10年以降も既存店昨対売上高がほぼ一貫して100を超えている点である。これは直営店500、FC店200、合計700店を超える体制で一貫してお客が離れていないのは外食としては圧倒的な魅力があることを示唆している。これも日常ルーチンの動線上に餃子の王将が組み込まれているからこそできる芸当であると考えられる。

 

外食ビジネスをみる際は、表面上のメニューなどに囚われずに業態の特性を考察する必要があるだろう。