トーキョーハーバー

コンサルティングの現場から

ラストマンシップ

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コンサルティングファームでさまざまな人と仕事としているとマネージャーまでで伸びる人は結局のところラストマンシップがあるか否かだとつくづく思う。パートナーシップを採るコンサルティングにおいてプロジェクトのデリバリーはもちろん提案活動(ピッチ)あるいはクライアントとの関係性構築(アカウント)のいずれの活動においても最終的な責任は担当パートナーにある。これは言い換えるとアナリスト・アソシエイト・マネージャー・プリンシパルには最終責任はないとも言えるし、実際にデリバリーや提案活動において要所要所でパートナーが(人によってやり方はさまざまであるが)コンテンツに入り込み品質担保をしている。

 

そのためともすれば、いくら「ノンパートナーもオーナーシップを持ちましょう」といってもマネージャーやアソシエイトは心のどこかでは「最終的にはパートナーが何とかしてくれる」と思ってしまいがちである。あるいは範囲を狭め「ここの部分は自分が責任を持つがプロジェクトあるいは提案全体の責任はパートナーに任せる」と思ってしまいがちである。実際に最終責任者はパートナーである以上、それはある意味で仕方がないことであるとも言える。しかし本当に伸びる人たちは立場上はプロジェクト全体の最終責任を負っていなかったとしても、あたかも本人が全体の責任を負っているかのように考え行動している。これは一般的には「プロジェクト(あるいは提案活動)全体のオーナーシップを持つ」「リーダーシップを発揮する」と表現されるが、私自身は「ラストマンシップを発揮する」と呼んでいる。

 

ラストマンシップを持っている人であれば、プロジェクトで直面している課題を本人が解決できなかったとしてもより実力のあるパートナーに「仕事を振る」ことで解決する、という発想をするが、ラストマンシップのない人であれば、自分自身は担当する仕事をこなしプロジェクト全体としての問題があったとしてもそれが担当外であれば「他の担当者の仕事」として特に何も行動を取らない。ラストマンシップを持つ人は「自分が仕事全体の最終防衛線であり自分が崩れたら仕事全体がダメになる」という発想をする。もちろん現実にはパートナーが実際には品質担保を行うが、ノンパートナーの人たちがそのような発想をすると圧倒的に全体の品質が向上する。

 

このような発想をすると結局のところジュニアのうちから仕事の全体像を見渡せるようになり、よりパートナーに近い目線で仕事ができるようになるため何が本当に重要なのかを見極められるようになるのである。以前にも書いた通り少なくともプロフェッショナルファームにおいては職位は後追いでくるため、自分よりも上の職位の目線で物事は早いうちからするべきなのである。

 

また私自身、一緒に働く人とは「ラストマンシップを持っているか否か」は常に見極めるようにしている。(もちろん本人には伝えない。)理想的には全員がラストマンシップを持っていることであるが残念ながら必ずしもそうではない。そうではなければ、ラストマンシップを持っている人にはその前提で仕事を任せるし、持っていない人には持っていないなりの範囲でできる仕事を任せ、それだけ以上のものは期待しないようにしている。そしていうまでもなく前者の人を信頼し後者の人には限定的な信頼しかしないし、極力前者の人と仕事をするようにしている。そのためラストマンシップを持っている人たちはより大きな仕事を任せられる、結果とし成長も早くなる。

 

このようなことを書くと「仕事全体のオーナーシップを持つなんて仕事の基本中の基本で当たり前ではないか」と思うかもしれない。しかしプロフェッショナリズムの高い人たちが多く集まっていると思われる私が所属するファームでさえ、そのような人は少ない。せいぜい2-3割だと思っている。そしてそれは周囲がいくら言ったところでほとんど意味がなく、結局は本人が自覚するか否かである。

 

自分が本当に仕事全体に対してラストマンシップを持っているのかは常に自問するべきなのである。