トーキョーハーバー

コンサルティングの現場から

経営課題としてのオペレーション

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ここ何回のエントリで経営は非連続の変化を起こさなければならない、といった旨を述べてきた。一般的に経営判断というと新しい領域に参入することや撤退、大型の設備投資やM&A、ビジネスモデルの展開といったことがイメージされがちである。しかし営業や生産の効率改善といったオペレーショナルなことであっても経営課題になりうる。重要なのはそこで非連続な変化を起きているか否かである。

 

以前に述べた通り鬼怒川ゴム工業で関山社長が行ったオペレーション改善は明らかに非連続な変化であった。もちろんこれまでもオペレーションの改善活動は行なっていたと考えられるが、セル生産方式の導入、工場間共通のKPIの設定、工場間競争を醸成する仕組みの構築といったことは現場の改善活動だけではまず起き得なかっただろう。これは社長がオペレーションに大きな改善余地があると判断し、それを経営課題としたからこそ実現できたと言えるだろう。大塚商会の現社長が90年代に行った「大戦略プロジェクト」もまた同じことが言える。全国の営業所が極端に権限を持っていたためさまざまな非効率が生じていた状態を変えるために、在庫管理や物流、営業業務を効率化するITシステムの構築、会計システム(SAP R/3)の導入、営業員への教育・営業オペレーションの刷新などを行った。一個一個を見ると一見オペレーショナルな改善活動に見えるが「生産性を向上する」という一貫した経営方針が根底にはあった。

 

昨今のIT人材の獲得も一部の企業では経営課題とするべきだろう。テクノロジーの進化から優秀なIT人材が必要とする製品・サービスを提供することが戦略的に求められる企業も多い。しかしIT人材は現在、引っ張りだこであるため、日本の典型的な大企業の通常の給与体系や待遇では優秀な人材を獲得することは極めて難しい。そのような企業にとっては戦略を実現するためにはIT人材を獲得することは経営課題と位置づけ採用方法に非連続な変化を起こさなければならない。それをせずに「採用は人事部の仕事である」といってオペレーショナルな課題にしてしまっては必要な人材を採用できることはないだろうし、結果として戦略を実現できないだろう。もちろん単純に人材を獲得するだけでもダメであり、そのような人材が最大限の価値を発揮できる仕組みに組織の動き方も変える必要があり、これもまた経営課題と言えるだろう。

 

オペレーショナルな活動であっても経営が介入しないと起きない(起きにくい)変化は存在する。事業フェーズによってはオペレーショナルな改善こそが経営課題になることもあり、そうなれば経営がその変化を主導しなければならないのである。