トーキョーハーバー

コンサルティングの現場から

引き算の発想、足し算の発想

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一つの考え方に引き算/足し算の発想というものがある。二つの事例を交えて以下では紹介していく。

 

【アマゾンの発想】
アマゾンの「顧客の購買の意思決定を手伝う」というコンセプトはとても有名だが、その他にベゾス氏は「著者と読者以外不要」という思想も持っている。これは抽象的には「引き算」ではなく「足し算」の発想をであり、非常に深いコンセプトではないかと考えている。つまり、平凡なITのEC企業であれば執筆→編集→営業→印刷→流通→販売という著者と読者を結ぶバリューチェーンの構成要素のうち、流通・販売をITにより減らすという発想をしていると考えられるが、ベゾス氏の場合はどうすれば著者と読者を最短で結べるか、という発想をしていると考えられる。つまり前者は「引き算」の発想であり後者は「足し算」の発想であると考えられる。

 

これは一見抽象的な言葉遊びに過ぎないように思えるかもしれないが、恐らくこのコンセプトはアマゾンの具体的な事業に大きな影響を与えていると思われる。例えば同社はしばらく前に誰でも自分の書いた文章を電子化してアマゾン内で電子書籍として販売できる、という自費出版サービスを開始したが、これはまさに「著者と読者以外不要」というコンセプトがあったからこそ出来たサービスであり、「流通・販売」をITで代替するという発想では出てこないサービスだと考えられる。つまりコンセプトが具体的なサービスにも影響を与えていると言える。

 

チョイノリの発想】
スズキが2000年代前半に開発した小型スクーターのチョイノリというバイクがある。これは街で短い距離の移動に気軽に乗れるスクーターを目指して同社が開発に着手し、1ccにつき1,000円(50ccで5万円)の価格で売れることを目標としたとのことである。しかし当初は当初は目標の車体コストと重量を大幅に上回り、苦戦していたとのことであるが、発想を「スクーターから不要な部品を削る」という「引き算」から「自転車に必要最低限の部品を加える」という「足し算」に変えた瞬間に大幅な重量ダウン(とコストダウン)に成功したとのことである。

 

チョイノリの場合は開発陣はコンセプトの転換をする前も後も「小型・軽量のスクーターを開発する」という目指すべきところは変わっておらず、またコンセプトの転換があっても超軽量材料が生まれたわけでも超小型エンジンが発明されたわけでもなく、技術的なイノベーションが起きたわけではない。にも関わらず大幅な重量ダウンが実現できたのはコンセプトという補助装置がいかに具体的な活動に影響を及ぼすかを物語っている。事業で何らかの非連続な変化を起こしたいのであれば、一旦具体的な活動からは目を離しコンセプトレベルでの転換を起こせないかを検討してみると良い。それにより深みのある変化を起こせるだろう。