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コンサルティングの現場から

10億円を作る道筋(スタートアップ編)

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先日、10億円の資産を作りたいというあるプロフェッショナルファームに勤務する20代の若手と雑談することがあった。(なおこの若手は女性であった。男性でも女性でもこのような気概を持つのは個人的にはいいことであると思っている。)正確には、キャリアを考える上でお金はかなり優先順位が高いという話になり、では具体的にいくら欲しいのかと訊いたところ10億円の資産とのことであった。いうまでもなく10億円を貯めるのでは大変である。日本の給与所得者の平均が420万円程度であり、年間100万円貯めたとしても(これは税金を考えるとほぼ不可能)1,000年掛かり、年間1,000万円貯めたとしても100年掛かる。つまり普通にしているとほぼ不可能であり、10億円の資産を作ろうと真剣に思うならば、少なくともその道筋が見えている必要がある。戦略が必要、と言い換えてもいいだろう。これから何回かに分けて、ファクトや数字を交えながらその道筋について述べていきたい。

 

まず一つ目はスタートアップで10億円を作る道筋である。これは起業であればあまり難しいことではない。(*追記:語弊がないように注釈を付けると、「道筋」という意味では難しいことではない、という意味である。現実には起業をして売却をするのは簡単ではないことである。あくまでも道筋としては分かりやすい、という意味である。)創業者あるいは創業メンバーとして10%~50%程度持っていれば、それを25~125億円の株式価値で売却し12.5億円の利益を手にし、そこから52%の税金を払って10億円が作れる。25~125億円ならば必ずしもIPOの必要はなく楽天KDDIソフトバンクDeNAサイバーエージェントといったIT系の大企業への売却も十分に考えられる。むしろまるごと売却した方がまとまってキャッシュが入るためIPOよりもマネタイズという意味ではやりやすいだろう。つまり事業を創業する場合は「10億円の資産を作る」という文脈上は難しいことはない。

 

次にスタートアップに創業メンバーではない形で入った場合を考える。以下では最近上場して1,000億円級の時価総額になったPKSHA、Heroz、Kudanの3社を例に挙げる。これらはいずれもテクノロジー系の会社であるが、経営陣を見るといずれの会社もナンバー3のポジションに創業したから数年して入社したメンバーがいる。いずれのP社、H社、K社それぞれ、ゴールドマンサックス+PEファンドのアドバンテッジパートナーズヘッジファンドのTaizen Capital出身の中田氏、人事コンサルのマーサー+ゴールドマンサックス出身の浅原氏、トヨタマッキンゼー出身の項氏が取締役としている。(皆、ピカピカの経歴といっていいだろう。)彼らを見ると生株は殆ど保有していないことが分かる。いずれも0.1%未満の生株しか保有していない。(ただしKudanの項氏はそれでも1.8億円くらいの資産にはなる。)一方でストックオプションを見ると、いずれの会社も発行済株式数の10%程度存在する。時価総額はそれぞれ1,500億円、600億円(一時期は2,000億円程度まではあった)1,400億円であるため、少し単純化ストックオプション10%、時価総額1,000億円とすると、ストックオプション(行使価格も1円想定、権利行使機関なとは無視)で100億円程度の価値があることになる。このうちどれだけが当該企業のナンバー3に付与されているかは不明であるが、10~20%程度はあると考えても強引ではないだろう。そうであれば資産ベースで10~20億円となり、税率を50%とすると税引き後で5~10億円の資産を築くことができる。ただし実際にはナンバー3の立場ですぐに株式を売却するとなると株価にとってもマイナスであるだろうし、またキャリア上も「そういう人」とは見られるだろう。一方で売却しないと株価が下がるリスクもあり、実際にH社の株価は上場直後からは大分下がっている。

 

まとめるとスタートアップを創業しなかったとしても、ナンバー3の立場で入社し、かつそれが1,000億円を超える時価総額となれば10億円の資産を築くことができるのである。なおこれらの企業の売上高(利益ではなく)は15億円、12億円、2億円となっており、時価総額は全て成長期待によるものであるといえる。株式価値を利益とマルチプルに分解するならば、スタートアップを選択する場合は、いくらの利益を上げているのかよりもいくらのマルチプルが付きそうかを考えるべきだろう。一時期はバイオテックブームがあり、やはり売上高数億~数十円の企業に数千億円の時価総額が付いたし、最近ではAIなどのテクノロジーやドローンなどのテーマには高いマルチプルが付いている印象である。平たく言えば「流行りものの業界」を見極めるべきなのである。個人的には利益そのものよりもはるかにマルチプルの方が(10億円を作るという文脈では)重要だと思っている。

 

しかしこれは見方を変えると今あげた3社はかなりの大成功事例と言えるだろう。「スタートアップで一攫千金」といった表現はよく聞くが創業者となるか、相当、いいタイミングでいいポジションでいい会社に入らないと厳しいとも言えるだろう。そしてナンバー4以降であれば上記の事例からは少なくとも10億円は狙うのはかなり厳しいともいえる。(もちろんナンバー5くらいで入ってそれを数回当てれば話は別だがそれはそれでかなり難しいだろう。)

 

10億円を欲しいというのは簡単だが、少しファクトを見てみると「10億円を作るための道筋(戦略)」が浮かび上がってくる。