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怪書:肩をすくめるアトラス

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「肩をすくめるアトラス」という本がある。これはロシア系アメリカ人の女性作家であるアイン・ランドが1957年に出版した小説である。たまに「全米で聖書の次に売れた本」といった言われ方をするが、正確には1991年にアメリカ議会図書館が5000人を対象にした調査で「最も影響力のある本」を調査した結果、聖書に次いで二番目に挙がった本、というのが正確である。なお1~5位は下記のとおりであり非常に「アメリカ的」である。

1位:聖書

2位:肩をすくめるアトラス

3位:愛と心理療法

4位:アラバマ物語

5位:ロード・オブ・ザ・リング

 

【単行本と文庫本は下記】 

 

「肩をすくめるアトラス」の著者であるアイン・ランドは小説家、思想家とでも表現するべき人であり、元FRB議長のグリーンスパン氏など様々な人に影響を及ぼしたとされる人物である。詳細は彼女の名前をインターネットで検索すると様々な記載があるので関心があれば見てもらいたい。私自身がこの著書を知ったきっかけはある投資ファンドアメリカ人のCIOからであった。彼は19歳で大学を卒業した天才肌の人物でありまた多読家であったが、そんな人物が「自分が読んだ本の中でベスト3に入る」と言っていたことがきっかけである。また別の有名な投資ファンドでもパートナークラスの必読書になっていると聞き興味を持った。

 

この本は1,300頁近い長編小説であり(値段も単行本だと7000円以上する)、概要を強引にまとめるならば「あるアメリカの鉄道会社の創業家の女性とたたき上げの鉄鋼王が様々な妨害を乗り越えて事業に取り組む様を描いたディストピア的小説」といったところになる。ただし重要なのは小説のあらすじそのものはではなく、あくまでもその根底にある思想である。そのため小説としてはお世辞にも出来がいいとは言えない。さまざまな登場人物が突然数ページにも渡って延々と小難しい演説を始めたり(クライマックスでは70頁ぐらいの演説がある)、思わせぶりなセリフを言う人物が突然出てきたりする。またそもそも登場人物の発言が抽象的で難しすぎて、少なくとも私は何を言っているのかほとんどわからなかった。そのような「怪書」にも関わらず熱烈なファンは存在するし、かなり売れている本である。私も何とか読み切り、色々と面白いと思ったが、何かと極端な本であり読み方にはかなりコツがいると思っている。そこで本エントリではそのコツを述べていきたい。

 

最初のコツは登場人物が「演説」を始めたら最初の3行だけ読んであとは読み飛ばすべきである。最初は読もうとしたが読んだところで何を言っているのか全く分からないし、5分後には忘れているので意味がない。真面目に読むのは時間の無駄である。あらすじさえ理解すればそれで十分、言いたいことは理解できるのでそれで充分である。あとは雰囲気を「感じ」ればいい。


次に予めこの本のメッセージを理解しておくと、読む上で効率的になる。この本で言いたいメッセージはこれも強引に一言でまとめるならば「やっぱり社会主義はだめだよ。資本主義がいいよ。」ということだけである。それさえ念頭においておけば大丈夫である。


また登場人物も強引に「資本主義の人間」と「社会主義の人間」に分けられる。この登場人物がどちら側の人なのかを意識するとあらすじが頭に入りやすい。

最近は文庫本も出ており、また映画化もされて多少ハードルも下がっているがそれでも異様に取っつきにくい本であることは間違いない。(なお、蛇足ではあるが映画は3部作であったがWikipediaによると「映画「Atlas Shrugged: Part III」は評論家たちからは酷評され、映画情報ウェブサイト「Rotten Tomatoes」ではレビュアー10名のうち肯定的レビューが0%だった」とのことであった。)とはいえ、まとめや映画ではなく原著を読むことには一定の価値があることは間違いないし、私自身もこの本は人生経験として読んでおいて損はなかったとは思っている。

 

関心があれば読んでみるといいだろう。