トーキョーハーバー

コンサルティングの現場から

数字の品質担保

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経営コンサルティングの直接の依頼主は経営者である。経営者は無論、細かい数字は気にせずに経営判断をするに足る粒度の数字さえ見られればいいため、そのアドバイザリーを行うコンサルタントも細かい数字はそこまでこだわる必要はない。むしろ多くのジュニアは細かい数字に囚われすぎて大きな視点を見失いがちであり、それを克服することを求められる。数字に関しては一般的なプロジェクトではアソシエイトが数字周りの分析・モデリングを担当し、マネージャーが品質チェックをし、パートナーがその結果の示唆がずれていないかどうかを確認する、という役割分担が多い。先ほど述べた通り、経営者に対するアドバイザリーを提供する上ではこの体制で十分であることが大半である。

 

ところが問題はプロジェクトの種類によってはそれでは十分「でない」こともある。特にM&Aなどの投資判断を支援するプロジェクト(いわゆるビジネスデューデリジェンス)では数字を少し変えたり、どのようにモデリングするかによって結果が大きく変わり、それが示唆する投資判断が根本的に異なることが多い。そのようなプロジェクトにおいて先ほどのようなやり方ではクライアントが求める品質を十分に担保できないのである。一方で経営コンサルティングファームのプロジェクトに占めるビジネスデューデリジェンスを筆頭とする数字が重要なプロジェクトの割合はせいぜい10-20%程度であるため、アソシエイトはもちろんのこと、マネージャーや場合によってはパートナーであっても数字の重要性を理解し、数字に関しては通常とは異なる品質管理をしている人が想像以上に少ないように見える。そのため数字周りで大炎上し、その上、マネージャーやパートナーが数字を担当したアソシエイトに責任を押し付けるという(私の感覚からすると)ちょっと信じられないようなことがしばしば起きる。いうまでもなく、責任を負うべきは担当したパートナーでありマネージャーやアソシエイトではない。そもそもきっちりと数字を作り込むことを生業としているPEファンドやM&A推進室の担当者とそれを統括するパートナー・経営者を相手に、数字以外が求められる仕事を多くやってきたジュニアが単独で求められる水準を出せる訳がない。単純に経験がないのである。あくまでもパートナーが責任を持って品質を担保するべきであり、アソシエイトの経験が不十分であれば、自らが腕をまくらなければならないのである。またそのような仕事を依頼する側は、担当パートナーがそれだけのコミットメントと実力があるかを見極めなければならない。

 

私自身、そのようなプロジェクトを責任者あるいはマネージャーとして担当するときはエクセルをセルバイセルで理解している。状況によってはモデルの担当者よりも構造を理解していたことも多いし、また必要に応じて文字通り自分でモデルを作る時もある。これはいうまでもなく通常の役割分担では考えられないことだが、クライアントに約束した品質を提供するためには手段を選ぶべきではないのである。

 

一般論として細かな数字が経営アジェンダになることは少ない。しかし場合によってはそれが重要な意思決定に関わることがあり、経営アジェンダになる時もある。そのため経営者へのアドバイサリーを生業とするコンサルタントもまた必要に応じて細かな数字の品質担保をしなければならないのである。