トーキョーハーバー

コンサルティングの現場から

What you need to believe

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投資、特にPE(プライベートエクイティ)などの長期投資の世界では”What you need to believe”というフレーズがよく使われる。PEの買収における”What you need to believe”はこの買収でリターンを出すために必要な条件であり、言い換えるとPEはこの条件が成立することに賭けている、と見ることもできる。この条件は単純に事業計画を対象会社が達成する、といった雑なものではなく、よりピンポイントに絞られている必要がある。根底にある考え方は将来予想はどこまでいっても予想なので外れることもあり、だからこそ重要な前提は何なのか、何に賭けているのかを明らかにしようというものがある。

 

例えば、仮にドラッグストアで使用する機器を製造・販売する企業に投資をする場合、売上は
①ドラッグストアの新規開店数×シェア
②未導入店舗が導入する店舗数字×シェア
③自社機器を導入している店舗の買い替え需要×防衛率
④他社機器を導入している店舗の買い替え需要×奪取率
といった具合に分けられる。(言うまでもないがこれはあくまで例であり、そもそもドラッグストアにそのような機器があるかどうかも知らない。)仮にこの製品の特性は下記であったとすると、
●ドラグストアの新店開業数は限られている
●この機器の業界での導入が10年程度前から始まり、5年前には90%以上で導入されていた
●買い替え需要が10年
●顧客は買い替え時にも同じ機器メーカーの製品を継続して使う傾向が強い


今後しばらくの売上はほぼ10年前に導入した機器の数で決まることになる。このような場合の”What you need to believe”は「自社機器を導入している店舗で買い替え需要が生まれ、それを競合に取られることなく取り込むことで今後5年間の売上高は伸びる」こととなる。先ほど述べた環境からはこれは妥当な前提であると考えられるが、それでも将来何が起きるかは分からない。もしかしたら店舗がケチって使用年数を15年に伸ばすかもしれないし、競合が大きく競争力のある製品を出し想定よりもシェアが取れないかもしれない。だからこそ何に賭けているのかを明らかにする必要がある。

 

別の例として、ある耐用年数20年の機器があり、それが買い替えの際にアナログ方式からデジタル方式に変わる流れがここ5年ほど生じていたとする。デジタル方式は専業プレーヤーが3社おり、そのシェアはほぼ変動していないとする。その中の3番手企業への投資を検討していたとすると、”What you need to believe”は「業界が今後もアナログ方式からデジタル方式の流れが続き現在のシェアは維持できる」となる。この場合の投資妙味はアナログ方式からデジタル方式の業界全体の流れに乗ってさえいれば業界3番手であってもデジタル方式では競合からシェアを奪えなかったとしても成長する、という点が挙げられる。

 

いずれの場合もここまで絞り込まれれば、将来予想という本質的には絶対などあり得ない
世界であっても、それなりに検証が可能となる。何か将来を予想する場合は、主たるドライバーが何であるかを明らかにし、結局のところ「何に賭けているのか?」を明確にするべきなのである。