トーキョーハーバー

コンサルティングの現場から

インテリジェンスの練り込み度

スポンサーリンク

この仕事はたまにパワポ屋・紙芝居屋と揶揄されることがあり、それはあながち否定できない部分もある。(もちろん経営コンサルティングの目的は経営上の課題の解決を支援することであり紙芝居を作ることはその手段の一つに過ぎない。)そのため、この仕事をそれなりの年数をやっていると相当な枚数のチャート(1枚のパワーポイント)とデックを見ることがあるし、ある程度の年次になってくると人が作った紙を見てその場でコメントすることが求められる。その経験を積んでくるとチャートを見た瞬間(1秒以内)にそれが考えが練り込まれたものか否かが分かるようになる。大げさではなく1秒以内に、である。そのため報告会の前に資料をパートナーやプリンシパルがレビューするときは資料をばばっとめくり、どれだけインテリジェンスが練り込まれたチャートが入っているのか、逆にインテリジェンスが詰まっていないチャートがどれくらいあるのかをまずは眺めることで全体像を把握することが多い。50ページのデックであっても原則として1枚1-3秒で眺め、少し気になったチャートは1分ほど見る、ということをすれば1デック5分もあれば全体像を把握できる。

 

結局のところインテリジェンスが練り込まれているチャートは視覚的なバランスに優れている。これはいうまでもなく単なる美的なバランスの問題だけではない。何らかの思考が視覚的に構造化されているためである。言い換えるとインテリジェンスの詰まったチャートは必ず図表・グラフが用いられているのである。逆に(エグゼクティブサマリーを除き)文字が何行も書かれているチャートは思考が十分に構造化されていないことを意味している。

 

またチャートではなくデックで見ると視覚的な流れが理にかなっているかを意識するべきだ。もしも想定と異なる流れであれば考え込まれていないデックである可能性が高い。例えば何らかの戦略検討のデックであれば最初に検討対象の全体像を示した地図のようなチャートがあるべきだし、前半には市場の推移を表した線グラフか棒グラフが入っているべきだし、最後の方には大まかな実行計画を示す矢羽のチャートかそれに準ずるものが入っていることが通常である。紙芝居に長く関わっているとそのような「想定する流れ」の膨大なデータベースが無意識の中に入っており、デックをレビューするときもそのデータベースを(無意識のうちに)参照しながら目の前のデックを眺める。そのためこの流れと視覚的な流れが一致していないと頭の中で警報がなるのである。

 

これができるようになるには結局のところ経験を積むしかない。自分でそれなりの枚数を書きクライアントやシニアのメンバーの反応を見ることで徐々に身につくのであり、あまり近道はない。ただ「インテリジェンスの練り込まれたチャートやデックは視覚的に判断できる」ことを明確に意識して人のチャートを健全な批判精神を見ることは有効な手段ではあるだろう。必ずしも自分が作っていなかったとしても良質なチャート・デックを頭の中のデータベースに貯めていくことで大分、加速されるだろう。またこれができるようになるとジュニアメンバーの仕事の品質保証が圧倒的に楽になる。

 

紙芝居屋にはインテリジェンスが練り込まれたチャートとデックを視覚的に判断できるようになることが求められるのである。