トーキョーハーバー

コンサルティングの現場から

経営コンサルティング業界の未来

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経営コンサルティング業界は久しぶりに激動期を迎えているように見える。本エントリでは自分なりの経営コンサルティングの歴史と将来に関する仮説を述べていきたい。

 

そもそも世界最古の経営コンサルティングファーム1886年にアーサー・デホン・リトル博士が立ち上げたアーサーDリトルであり、19世紀後半から20世紀初頭が経営コンサルティング業界の黎明期(第1フェーズ)と言えだろう。続いてマッキンゼーの中興の祖であるマービン・バウワー氏が中心となり1940年代にファクトベースドコンサルティングを「発明」し、それまでは業界経験のあるグレイヘアコンサルタントが主導していたコンサルティングからの転換を図った。これが業界の第2フェーズだと個人的には理解している。続いて1960年代から経営コンサルティングファームビジネススクールが中心となって軍事の世界で利用されてきた戦略という概念をビジネスの世界にもたらされた。特に1969年にBCGによって発明されたプロダクト・ポートフォリオ・マトリクスはビジネスにおける戦略の重要性を決定的に知らしめたと理解している。これが第3フェーズと呼べるだろう。

 

しかし第3フェーズ以降、様々なコンセプトは生まれたものの大きな変化はなく、経営のアドバイザリーだけでなくオペレーションの支援にも手を徐々に広げてきたと考えている。そんな中、ここ5年ほどで業界が新たな転換点を迎えてきたように感じる。具体的には各社が伝統的ではないコンサルティングサービスの拡充に注力し始めてきたことが大きな変化として挙げられる。例えば、主要な経営コンサルティングファームは従来よりも大胆な成果連動型のコンサルティングサービスの提供を本格的に始めている。また買収・提携によりファームにはなかったサービスの拡充を図っている。有名な例だと、大手デザインコンサルティングファームであるLUNARを買収したマッキンゼーなどはその好例だろう。また買収だけでなくクライアント企業やパートナー企業とコンサルティングファームとの提携も増えてきている。さらに最近ではどのファームもほぼ例外なくデジタルテクノロジーを活用したサービスラインの強化に走っている。

 

個人的には昨今、話題になるAIをはじめとするデジタルテクノロジーの経営への活用の大半はバズワードであり、失敗に終わると思っている。コンサルティングの現場での素朴な実感として、そもそも多くの企業はこれまで存在していたIT技術も十分に活用できておらず、(本物の)AIの経営への活用などはまだまだ優先順位は高くないと思っている。またデジタルテクノロジーの活用とその戦略策定から実行までの支援を標榜する多くのコンサルティングファームのデジタル部隊もどれだけ本当にテクノロジーを持っているのかも正直疑わしいと思っている。数年前までは全く異なるコンサルティングを行なっていたメンバーがジュニア・シニア問わず多いのではないかと思っている。しかし上記のような問題はありながらも、中期的にはデジタルテクノロジーを経営レベルで活用し企業価値を向上する企業も今後は増えると私は思っている。デジタルテクノロジーは戦略変数になり得るのである。そして今はいわば玉石混交の状態にあるのだろう。そのためこれまで以上に経営者はCIOに任せるのではなく、経営アジェンダとして真剣にデジタルテクノロジーと向き合う必要が出てくるだろう。

 

少しデジタルテクノロジーに話が偏ったが、個人的には経営コンサルティングファームがここ5年程度で広げたサービスライン(デジタルテクノロジー以外のサービスラインも含む)の中には失敗するものも出てくると思っている。もしかしたら失敗する方が多いくらいかもしれない。しかし それは第4フェーズで生き残るための必要な挑戦であり、それを恐れるべきではなく積極的に試すべきだと考えている。またファーム内においても新しいサービスラインに挑戦し失敗した人たちに対しては決して見下すべきではなく、敬意を払うべきである。試行錯誤を通じて「石」がふるい落とされ「玉」が残るのだろう。そしてそれを早く見つけたファームが第4フェーズでは強いファームとなるのではないだろうか。そしてこの仮説が正しいとすると、第4フェーズでは様々なサービスラインを試すことができるだけの体力のある大手ファームの方が有利ということを示唆しているのかもしれない。これまでは規模があることがあまり差別化の要因にならなかった(=戦略変数ではなかった)業界から、規模が効く業界へと転換していると見ることができるかもしれない。

 

一方で伝統的な経営者に対するアドバイザリーは引き続き存在し続けるだろう。特に日本においてはGDPに対する経営コンサルティング業界の市場規模の比率が著しく低く(一説によると先進諸国の1/6程度)、まだまだ拡大する余地はあるだろう。第4フェーズの覇者にならなかったとしてもブティックファームとして存続するのではないだろうか。

 

以上は経営コンサルティングの現場から見た業界の将来に関する仮説である。いずれにせよ10年後、20年後が楽しみである。