トーキョーハーバー

コンサルティングの現場から

最適報酬水準

スポンサーリンク

高額報酬が一部界隈で話題になっている。個別の問題はさておき、経営者あるいは従業員にいくらの報酬を出すかは古典的だが案外難しい水準のように思える。低すぎると優秀な人材を引き付けることができないが、高すぎると果たしてそれに見合うだけの成果を出しているかが怪しくなる。 

 

しかし考えてみると最適報酬水準は「理論上は」簡単に算出できる。コーポレートファイナンスの視点に立てば企業の目的は「企業価値を最大化すること」であるため、最適な報酬もまた企業価値を最大化する水準となる。ここで報酬控除前の企業価値はインプットとする関数と考えられる。

 

報酬を増やすと最初はより優秀な経営者を採用することができ、結果的に(報酬控除前)企業価値は増大すると考えられる。ただし徐々に報酬を増やしても得られる(報酬控除前)企業価値の増分は逓減していくと考えられるだろう。言い換えると限界効用逓減の法則と同じ考え方が当てはまる、という前提が成り立つと考えている。報酬を1億円から2億円に増やすと、より優秀な経営者を招聘することができ結果的に(報酬控除前)企業価値は増えるが、報酬を100億円の状態から101億円に増やしても殆ど(報酬控除前)企業価値は増えない、という前提は無理な前提ではないだろう。そして恐らくある時点では報酬をいくら増やしても(報酬控除前)企業価値は変わらないと考えるのも無理な前提ではないだろう。このような前提を受け入れると報酬控除前企業価値から報酬を引いた企業価値はある時点でピークを迎え、それ以降は減少していく。この企業価値の最大値こそが理論上の最適な報酬の水準となる。

 

長々と書いたが、これは「企業価値が増え続けるまでは報酬を増やすべき」という見方もできる。もしも報酬を増やして企業価値が増えるのであれば、たとえ高すぎるという批判を受けようが、誰が何と言おうが上げるべきなのである。その水準までは「上げ続けて」問題ないし「上げ続ける」べきなのである。上げないことは相対的に企業価値を毀損しているとすら言える。ここまでは純粋な論理展開であり、もちろん現実には報酬を増やしたからといって企業価値が増えるかどうかなんて予想することができないし、そもそも状況に応じて求められる経営者の能力も変わってくる。このような曲線の算出は不可能である。しかしそれでもこのような原理原則の考え方を持つことはさまざまな企業活動の指針になると考えている。もしも報酬を1億円増やしたときに(報酬考慮前の)キャッシュフローが1億円以上増えるのか?もしもCF/売上高比率が10%の事業であれば報酬を1億円増やすことで売上高が10億円以上増えるのか?は思考実験として考えてみるといいだろう。少なくともこのようなレンズで物事を考えることは必須である。特に売上高が1,000億円を超えるような企業であれば、報酬を1億円増やすことで得られ効果は1億円を超えることは決して難しいことではない場合が多いだろう。また言うまでもなくこの発想は報酬以外の全ての費用に当てはまる。企業価値最大化というシンプルな思想を軸に現実的な費用をつなげて考えるべきなのである。

 

報酬という古典的な問題も企業価値最大化という観点から考えてみると答えは(理屈の上では)シンプルなのである。このような原理原則の考え方は報酬に限らず、プロフェッショナルならば持っておくべきだろう。