トーキョーハーバー

コンサルティングの現場から

ビジネスデューデリジェンスにおける二つの論点

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企業を買収するにあたってはビジネス・デュー・デリジェンス(以下BDD)を一般的には実施する。BDDの実施にあたってはコンサルティングファームのような外部アドバイザーを起用する場合もあれば、買収者単独で検討する場合もあるが、いずれにせよ買収対象のビジネス面の精査を実施する。

 

BDDには二つの似て非なる性質の論点が私はあると強く思っており、BDDに慣れていない人、特に外部アドバイザーがBDDに苦戦する場合、その多くはこの二つの論点の混同に起因していると思っている。具体的に以下二つの論点である。
●この会社を買収するべきか?
●(買収する場合)この会社を幾らで買収するべきか?

このように述べると大抵の人は「買収するべきかどうかは買収価格による。だから二つの論点は一緒に切り分けられない」と思うだろう。しかしこれは一見正しそうで実際はそうではない。

 

前者の論点は「買収候補を買収することで当社の戦略は強化されると想定するべきか?」あるいは「買収候補は当社の戦略意図に合致した事業を展開していると考えるべきか?」と言い換えることができる。つまり前者は戦略適合性に関する論点である。一方の後者はバリュエーションに関する論点である。どんなに安定したキャッシュフローを生み出していたところで、自動車部品会社は調味料の卸問屋は買収しないのである。それは自動車部品会社にとって調味料の卸事業は戦略的適合性がないためである。この例は明らかだが現実の買収は戦略適合性があるか否かの判断は思いの外、難しく、そのためBDDが必要なのである。そしてこれは経営アジェンダであるといえよう。(なお、プライベートエクイティファンドの場合は若干様子が異なる。ただそれでもBDDにおいては結局のところ上記二つの論点に分けて買収は検討されるが、その理由は割愛する。)

 

一方、後者の論点はバリュエーションに関する論点である。買収額は経営者にとって重要ではあるものの、買うか・買わないかは経営判断で一度買うと決まってしまえば、幾らで買うかは(乱暴に書けば)それは担当者の問題であり少なくともCEOの関心ごとでは原則としてはないのである。

 

BDDというとどうしても分析的なイメージがあり、すぐに会社が将来生み出す売上高や利益に意識が行きがちであるが、それは二つ目の論点でありそれを検討する前にまずはそもそも買収するか否かの判断が必要である。そして、そのためには当社(=買収者)との戦略適合性の評価が必要であり、そのレンズを持って買収候補対象の事業を評価するべきなのである。戦略の議論とバリュエーションの議論は分けてはならないのである。