トーキョーハーバー

コンサルティングの現場から

アカウント・ピッチ・デリバリーとプロフェッショナル

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アーリーステージ投資とコンサルティングを行う会社を経営している知人がいる。この会社の主力は創業間もない会社に対して数百万円から数千万円までを投資し事業の立上げ支援を行うことが中心であるが、その傍で(もっとはっきりといえば日銭を稼ぐために)売上高数十億円から数百億円までの中堅企業に対してM&A戦略や新規事業立案のコンサルティングを行なっている。決して大きい会社ではないためコンサルティングプロジェクトを引き受けた場合は、大抵、彼の社外の仲間たち(コンサルティング会社出身で同じく何か事業をやる傍でコンサルティングをアルバイトで行なっている20-40代の人たち)に協力して貰いながらチームを組成しデリバリーをするという方式をとっている。


この知人の報酬の分配方式は非常に明確で「アカウント、ピッチ、デリバリーそれぞれ1:1:1」というものである。デリバリーとは実際のプロジェクトを実行し成果を提供することである。ピッチとは当該プロジェクトを受注するまでの一連の提案活動でクライアントとの初期的な議論、論点の整理、プロジェクトのスコープの設定、プロジェクトのスケジュールの検討、フィーの交渉、プロジェクト体制の立上げなどが含まれる。アカウントとは当該クライアントとの関係性のことであり、当該プロジェクト以外の何らかの関係性構築の活動の蓄積である。例えば1500万円のプロジェクトを受注した場合、大抵の場合はこの知人と昔から関係のあるクライアントからの依頼であることが多いため、まずはこの知人の会社に500万円が分配される。提案活動は多くの場合、この知人とデリバリーでマネージャーロールを務める人で行うため250万円ずつ分配される。そしてデリバリーは大抵、マネージャーとコンサルタント2名程度で行われるためマネージャーに250万円、コンサルタントに125万円ずつ分配される、といった形である。


個人的にはこの分配は非常に納得性が高く、またプロフェッショナルサービスにおける付加価値の分布を分かりやすいく表現しているのではないかと思っている。コンサルティングファーム投資銀行、弁護士事務所といったプロフェッショナルファームで夜遅くまで働いている若手は「何でプロジェクトで一番価値を出している自分たちがこんなに給料が低く、対して何にもやっていないパートナーはあんなに給料をもらっているのだろうか?」と思いがちである。確かにパートナーは(働き方にもよるが)個別案件の実務にはあまり深く関与しておらず、クライアント企業への価値提供を対して行なっていないかのように見える。しかし、これはプロフェッショナルサービスの一面しか見ていないための考え方で、プロジェクトが始まるまでには数年単位の関係性構築、論点の整理などの提案活動・プロジェクト設計活動に多くの時間が割かれており、全体の中での価値はせいぜい1/3に過ぎないのである。そもそもプロフェッショナルサービスは「デリバリーが出来て当たり前」であり、デリバリーは勿論大事だがプロジェクトが始まった段階で既に一定の成果が出ることが確約されている。もちろん、中には失敗プロジェクトもあるがそれが続くとこのプロフェッショナルファームはこの世からいずれ無くなる。むしろ「どうやってやるか」よりも「そもそも何をやるべきなのか」を考えることの方が重要であり、それはこれまでの関係性と提案活動によって規定され、それらはデリバリーの倍の価値があるのである。


プロフェッショナルとして生きるのであれば、なるべく早くデリバリーは「出来て当たり前」となり、むしろ相手のニーズに即した提案やクライアントとの関係性構築ができるようになるべきだろう。またデリバリーは勿論、ピッチもなるべく自分ではなく他人をレバレッジできるようになるべきだろう。これが出来てようやくプロフェッショナルとして一人前である。